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【アート】『 伊庭靖子展 まなざしのあわい 』ー“見る”ことの可能性を探求するー

現在、東京都美術館にて開催中の『 伊庭靖子展 まなざしのあわい 』。画家の眼とモティーフとの“あわい(間)”にある世界に魅せられ、触れたくなるようなモティーフの質感やそれにまとう光を描きつづけている伊庭靖子さん。彼女が手がけた近作・新作の絵画や版画の作品展示はもちろん、自身にとって新たな試みの映像作品も見逃せない本展覧会と、美術評論家・清水穣さんと開催された対談の様子をご紹介します。

“見る”という体験を楽しめる伊庭靖子さんの作品

ふわふわと柔らかいクッションやツルツルとした硬い陶器など、思わず手を伸ばしてしまいたくなるような作品を手掛けている現代美術作家の伊庭靖子さん。
会場では、モティーフをクローズアップして描いた2000年代の作品をはじめ、それまで接近していたモティーフとの距離が少しずつ広がり、空間や風景を取り込んだ新作も展示されています。
その他にもまるで写真のような自然の風景を捉えた版画や初挑戦した映像作品も紹介されています。様々な作品から“見る”ことを改めて意識し、“見る”という体験をぜひ楽しんでみてください。

対談から伝わる伊庭靖子さんの関心の核

対談風景(左:伊庭靖子さん、右:美術評論家・清水穣さん)

7月20日(土)に東京都美術館で開催された、伊庭靖子さんと伊庭さんを初期から知る美術評論家・清水穣さんとの「対談」では、家族や飼猫にまつわるエピソードだけでなく、版画から絵画に目覚めた理由や驚愕の制作過程が話題に上がりました。その他にも刻々とモティーフが変化していった変遷とともに、クロード・モネやゲルハルト・リヒターなどの他の作家による作品と特徴を例にあげながら、伊庭作品との共通点や相違点が語られました。

版画から油彩に転身! 油絵でなければならかった理由

《grain #2019-7》(部分)協力:ギャラリーノマル

自身の祖父や父親が油絵画家であったことやその周囲も絵を描く人が多かったという伊庭靖子さん。
当時、自宅にかけられていた祖父の絵画作品に子供心に暗く重い印象を受けていたことから、「軽やかな作品を生み出したい」という想いが芽生えました。
大学では絵画ではなく版画を専攻しました。しかし、色彩や写真が使用できる特性を持っている版画でも、その制作過程において網点の間が埋まらないもどかしさを抱え、独学で絵画を始めました。版画でも写真から制作をしていましたが、「写真から描こう!」と実践してみたら、思いのほか “ぼかす” ことの面白さに気づき、その “ぼかす” をいかして作品制作を行っていました。

驚愕の制作過程について

伊庭靖子 制作風景

「作中に使用する色が分かるんです。」と語る伊庭さんは、制作前に予めその作品で用いる色を準備した後、淡い色彩で描かれていながらも何層も塗り重ね、工芸的な密度を持つ作品を生み出しています。
「トントントントン…」と叩き込みながら、女性の肌にファンデーションをのせるように、優しいタッチでカンヴァスの上に絵具を重ねていきます。丁寧に点で描くことは、彼女が表現したい質感や光を際立たせるこだわりの手法です。

モティーフが変化していった変遷を辿る

会場風景

伊庭さんが油絵を始めた頃に描いていた植物にはじまり、果物から布地、寝具から陶器へ、次第にモティーフが変化していった変遷と辿り、クロード・モネ《睡蓮》の遠近感やゲルハルト・リヒター《フォト・ペインティング》のレイヤーなど、他の作家作品と特徴を例にあげながら、共通点や相違点とともに展開された「対談」。現在、これまで接近していたモティーフとの距離が少しずつ広がり、空間や風景を取り込んだ新たな作品も手がけています。今後、どのようなモティーフがいかに描かれるのか、伊庭さんの活動にますます注目ですね!

10年ぶりの開催となる美術館での個展

会場風景

これまでたくさんの人達を魅了してきた伊庭靖子さんの作品は、ギャラリーで個展などを開催すれば、すぐコレクターの手に渡るため、本展出品作品の約4割が個人蔵となってます。
伊庭さんの個展は、2009年の『伊庭靖子展ーーまばゆさの在処ーー』(神奈川県立近代美術館)以来、美術館では10年ぶりの開催です。
ぜひ貴重なこの機会を生かして美術館に足を運んでみてください。

また会期中には、本展覧会をお得に鑑賞できる【お得な割引デー】や、より作品のことが楽しめる【関連プログラム】があります。そして、館内ミュージアムショップでは『伊庭靖子展 まなざしのあわい』のグッズが展開されているだけでなく、レストランでは本展覧会をイメージしたコラボメニューも用意していますので、ぜひお帰りの際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

展覧会情報

展覧会名:伊庭靖子展 まなざしのあわい
主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
会期:開催中~ 2019年10月9日(水)
休室日:月曜日、9 月 17 日(火)、9 月 24 日(火)
※9 月 9 日(月)、16 日(月・祝)、23 日(月・祝)は開室
開室時間:9:30~17:30 *入室は閉室の30分前まで
夜間開室:金曜日 9:30~20:00 *入室は閉室の30分前まで
※ただし、8 月 23 日、30 日は 9:30~21:00
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
観覧料:一般 800 円/団体(20 名以上) 600 円/65 歳以上 500 円
大学生・専門学校生 400 円 ※高校生以下無料

各種割引

「サマーナイトミュージアム割引」
8 月 23 日(金)、30 日(金)の 17:00~21:00 は、
一般 600 円、大学生・専門学校生無料(証明できるものをお持ちください)

「家族ふれあいの日」
9 月 21 日(土)、22 日(日)は、18 歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2 名まで)は、一般料金の半額 (証明できるものをお持ちください)

「シルバーデー」など
8 月 21 日(水)、9 月 16 日(月・祝)、18 日(水)は、65 歳以上の方は無料。当日は混雑が予想されます。(証明できるものをお持ちください)

「都民の日」
10 月 1 日(火)は、どなたでも無料

「相互割引」

東京都庭園美術館で開催中の「1933年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと」(会期7/20~9/23)、東京都現代美術館で開催中の「あそびのじかん」展(会期7/20~10/20)の観覧券を本展会場入口でご提示の方は、一般料金から200円引き。本展観覧券による割引あり。

東京都美術館の特別展「コートールド美術館展 魅惑の印象派」の観覧券(半券可)を本展会場入口でご提示の方は、一般料金から300円引き(1枚につき1名1回限り)。本展観覧券による割引あり。

関連プログラム

■アーティスト・トーク
展覧会会場にて、伊庭靖子さんから制作の様子や作品についてお話をうかがいます。
日 時:8月24日(土) 11:00~11:45
※聴講無料。ただし、本展観覧券が必要です。展覧会会場にお集まりください。

■ダイアローグ・ナイト「あわいをまなざす」
作品から感じたり考えたりしたことをアート・コミュニケータと話しながら楽しむ、金曜夜に実施する参加型プログラムです。
日 時:8月23日(金)、8月30日(金)、9月6日(金)、9月20日(金)
各回 19:00~19:45 定 員:各回先着 20 名程度
参加費:無料 ※ただし、当日の観覧券が必要です。展覧会会場にお集まりください。

トップ画像:会場風景