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【アート】瀬戸内国際芸術祭2019 入江早耶 制作日誌『創作の言霊』ー小豆島編ー

今年、瀬戸内の島々を舞台に開催される現代アートの祭典『瀬戸内芸術祭2019』が開催されています。
瀬戸内の島々を巡り、3つの季節を楽しみながら、現代アートに触れる107日間。
私が手掛ける作品『漁師の夢』は、小豆島・二十四の瞳映画村内に展示されます。
今回も制作日誌というかたちで…本作ー品『漁師の夢』に焦点をあてて、作品の制作裏話や、そこに託した想いをご紹介します。

私の作品は下調べが肝心!
小豆島の文化や歴史を徹底的にリサーチ

映画村内の展示会場である「漁師の家」

前回のアトリエ編でもお伝えしましたが、作品制作時には入念な下調べをおこないます。

本作品『漁師の夢』を手がけるにあたり…自分の作品が小豆島・二十四の瞳映画村内で展示されることから、小豆島のこれまで培われてきた様々な文化や歴史を調べることはもちろん。映画村のベースとなっている壺井栄の小説『二十四の瞳』を読んでみたり、実写化された映画化・映像化されている作品資料を鑑賞しながら、作品の要素となるイメージを集めていきました。そして、小豆島の立地が豊かな海に囲まれていることや、作中の子どものうちのひとりの家業が漁師をしていたことから、海に着想を得ながら『 自分なりに“漁師”のスッピンオフ(サイドストーリー)を創造してみたら面白いかもしれない! 』というアイディアが思い浮かんだのです。

その方向性が決まったら…続いて、物語の時代背景から当時の人々がどのような暮らしを行なっていたのか、そして小豆島近郊ではどのような魚が釣れていたかなど、映画村の協力を得ながら現地へのリサーチへと乗り出しました。
当時の人々は専業として生活を送っており、漁師に嫁いだお嫁さんも一丸となって、漁に出かけたり、魚を捌いたり、旦那さんの仕事をサポートしていたそうです。そして、小豆島・映画村のある田浦近辺では、春にはメバル、サワラ、イカ、夏にはスズキ、アジ、カレイ、秋にはハマチ、冬にはタイ、ヒラメ、チヌなど、季節毎に様々な種類の魚が獲れたらしく、それ以外にもタコ漁も盛んでおこなわれており、兼業せずとも豊かな暮らしが成立っていたことがわかりました。

秘宝から世界に想いを馳せてみて
アートと海との共通点を探してみよう

設営風景

膨大な時間を費やした下調べや、現地のリサーチや現地に赴き、感じ得たヒントから生み出した本作品『漁師の夢』。会場『漁師の家』にあるカマドやタンスに耳を傾けてみると、“漁師がコレクターだったー” サイドストーリーが流れる仕掛けになっています。さらに、納戸に足を踏み入れてみると海をイメージした美しいセルリアンブルーの壁面には、余すところなく小豆島近郊や世界中に生息する数多くの魚の資料・文献・魚拓を飾っています。会場に足を運んでみたら…その資料にも目を凝らしてみてください!資料の絵が薄く消えていることに気が付くことでしょう。室内の中央にあるアンティークの棚には、その資料の絵を消しゴムで消して出た消しカスから創り出した様々な秘宝があります。

2次元の平面的な絵から3次元の立体的な物体へと変容した作品を楽しめるとともに、新たなモノへと生まれ変わる日本古来からの輪廻転生の思想に触れることができます。そして、小豆島のこれまで培われてきた文化や歴史はもちろんのこと、島の周囲を囲んでいる大海から広い世界に想いを馳せてみてください。

会期中に多国籍の人々が瀬戸内の島々を巡りながら、数多くの点在するアート作品を鑑賞する『瀬戸内国際芸術祭』では、アートを介在としながら国籍や人種など異文化を越え、人と人との豊かなコミュニケーションが生まれます。私たちの心を豊かにしてくれるアートと、作品の大きなテーマとなっている海とは、複雑に入り組んでいる世界に対して “繋がり” という共通点を持っています。一人、一人、コミュニケーションを心掛けながら “繋ぐ” を努めることで、人と人との結び付きから多様性を理解し合えるキッカケになることでしょう。

持ち帰れるアート作品
思ったこと、感じたこと、繋いでみよう

今回、本作品『漁師の夢』にちなんで “持ち帰れるアート作品” を作ってみました!
映画村内にあるギャラリー松竹座2Fの書肆海風堂では、1つずつ丹精込めて作り上げた『魚のおみくじ』が販売しています。ぜひ、本作品の魚コレクターである漁師になった気分で、少しクスッと笑える表情豊かな魚たちを釣り上げてみてください。その魚の中にあるおみくじの言葉にもひと工夫施しているので、そちらも併せて楽しみにしてくださると嬉しいです。

いかがでしたでしょうか?「現代アートって、難しいよね。」「現代アートって、何を伝えたいのか分からない。」…現代美術作家の一人として、そんな言葉をよく耳にします。今回、『制作の言霊』やPR動画を通じて私の表現を理解していただける機会になればと思い、作品の裏側に秘められた想いをお伝えしました。また、一人でも多くの方々にこのような2次制作物が作品鑑賞の手助けになる務めを果たせたら幸いです。

瀬戸内国際芸術祭』で瀬戸の島々から小豆島を訪れ、『二十四の瞳映画村映画村』に足をお運びの際には、私の作品『漁師の夢』をご覧になってください。そして、あなたが素直に思ったこと、あなたが素直に感じたこと…自分以外の誰かに共有して“繋いでみて”もいいと思いますし、お土産のように大切に持ち帰り過去から未来の自分に“繋いでみても”素敵ですね。あなたの“繋ぐ”を楽しみにしています。

設営動画

作家プロフィール

入江早耶 (いりえさや)
2008年ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学交換留学。
2009年広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程修了。
主な展示に、2018年「Radierungen」MICHEKO GALERIE(ミュンヘン、ドイツ)、「駿河の国の芸術祭 富士の山ビエンナーレ」(富士市、静岡)、2017年「NEWoMan ART Wall Vol.9 入江早耶」(NEWoMan ART Wall、東京)、「Ascending Art Annual Vol.1」(SPIRAL、東京/ワコールアートセンター、京都)など。主な受賞歴に2014年「I氏賞」奨励賞、2012年「第六回資生堂アートエッグ」shiseido art egg賞など。

展覧会情報

入江早耶 『漁師の夢』
会期:4月26日(金)〜11月4日(月)
会場:二十四の瞳映画村
香川県小豆郡小豆島町田浦甲931番地
HP:https://www.24hitomi.or.jp