【アート】瀬戸内国際芸術祭2019 入江早耶 制作日誌『創作の言霊』ーアトリエ編ー

今年、瀬戸内の島々を舞台に開催される現代アートの祭典『瀬戸内国際芸術祭2019』が開催されます。
瀬戸内の島々を巡り、春・夏・秋、3つの季節を楽しみながら、現代アートに触れる107日間。
私が手掛ける作品『漁師の夢』は、小豆島・二十四の瞳映画村内に展示されます。
今回、制作日誌『創作の言霊』ーアトリエ編ー というかたちで、私の作品の裏側に秘められている想いをご紹介します。

作品材料である消しカスとの出会い。
そして、作品コンセプトである輪廻転生。

私は幼い頃から、映画を観たり、物語を読んだり、比較的空想をするのが好きな子どもでした。
大学生になって、自分の頭の中で思い描いているイメージを現実の世界に取り出してみたくなり、様々な素材で創作方法を模索していました。身近な布をほぐしてみたり、紙をクシャクシャにしたり…そんな中で、2次元の平面の絵を消しゴムで消し、その消しカスで造形してみようと思いつきました。

私の作品に欠かせない消しカスは、消しゴムの命を削って出てきたもののように思えたんです。本来なら消しカスは次の用途もなく、捨てられてしまうものですが…消しカスを集めて、丹精込めて練ることで、新しいモノを作れる素材へと変化していきます。

そこで、すべての物には魂が宿るという日本古来からの考えと、新たな命が吹き込まれるイメージとが重なりました。そして、2次元の平面的な絵などから3次元の立体的な物体へと変容していく過程は、新たなモノへと生まれ変わる輪廻転生の思想につながっていきました。

古き良き感覚をアップデート!
2つのイメージを掛け合わせて、1つの立体を起こす。

昨年発表した作品「蛇祥天ダスト(2018)」では、五穀豊穣の神様『吉祥天』と南米の神様『コアトリクエ』を掛け合わせた作品を制作しました。南米の神様『コアトリクエ』は、頭に2匹のヘビがついていて、スカートもヘビだったりしたのですが…敢えて、異文化でバランスが違うものを組み合わせています。
資料で調べた内容をもとに、現代社会と照らし合わせながら自分なりに物語を構築し、その流れに合わせて古き良き感覚もアップデートしようと考えました。 この作品は『現代に対応した神様がいるとしたら、どんな姿だろう…』と想像したものです。

神社仏閣を巡ると、それぞれ異なる役割を担う七福神が祀られていたり、『交通安全』『商売繁盛』『学業成就』などの御守りを見かますが…現代の問題に対してピンポイントで救いを求められる神様はいないことに気がつきました。
例えば、先ほどの「蛇祥天ダスト」は『輸入の神様』をテーマとした作品ですが、他にも『Wi-fiの通信速度を速くする神様』とか、現代に寄り添う神様がいても良いと思うんですよね。
そこには、作品を通して異文化交流が円滑になってくれたら嬉しいなという想いも込められてます。

ちょっとだけ制作プロセスと息抜きを教えちゃいます☆

私の作品は小中学校などで流行した『練り消し』を彷彿させ、その創作方法は簡単だと思われがちなのですが…じつは、結構ハードなんです。

まずはじめに、何を消そうか?というコンセプト作りからはじまります。
続いて、消しゴムで消すための資料や素材を集めたり、関連する場所を訪れたりします。その資料を集めるのにも日数を要しますし、内容を読み込んで自分で物語を構築していく工程も時間がかかりますね。
造形の段階では、消しゴムで消したり、消しカスを練ったりする作業にはもちろん体力を使いますし、細かな作業では集中力が必要で、物量をこなすとなるとかなりの労力を使います。職人なんです(笑)。

作品制作は基本的にアトリエや自宅などにこもりっぱなしになってしまうので…たまに息抜きで外出するようにしています。外出先ではSFファンタジーやホラー映画を鑑賞したり、散歩もします。それがまたインスピレーションの源になり、自分の作品に影響する連鎖反応が起きたりもするんですよね!

次回は会期中の小豆島編から…二十四の瞳映画村内に展示されているインスタレーション作品にまつわるエピソードを展開したいと思います。 乞うご期待ー!

制作動画

作家プロフィール

入江早耶 (いりえさや)
2008年ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学交換留学。
2009年広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程修了。
主な展示に、2018年「Radierungen」MICHEKO GALERIE(ミュンヘン、ドイツ)、「駿河の国の芸術祭 富士の山ビエンナーレ」(富士市、静岡)、2017年「NEWoMan ART Wall Vol.9 入江早耶」(NEWoMan ART Wall、東京)、「Ascending Art Annual Vol.1」(SPIRAL、東京/ワコールアートセンター、京都)など。主な受賞歴に2014年「I氏賞」奨励賞、2012年「第六回資生堂アートエッグ」shiseido art egg賞など。

展覧会情報

入江早耶 『漁師の夢』
会期:4月26日(金)〜11月4日(月)
会場:二十四の瞳映画村
香川県小豆郡小豆島町田浦甲931番地
HP:https://www.24hitomi.or.jp