【書籍】『美術館と大学と市民がつくるソーシャルデザイン 東京都美術館×東京藝術大学 とびらプロジェクト編 』

現在、絶賛発売中の『美術館と大学と市民がつくるソーシャルデザイン 東京都美術館×東京藝術大学 とびらプロジェクト編』。本書籍は、東京都美術館と東京藝術大学が連携して取り組む「とびらプロジェクト」の全貌とともに、現代社会が求めている文化やアートを介し、7年間の実践を通した実例とともに新しいコミュニュティ回路について記されています。美術館好きの方からコミュニティづくりに興味がある人はもちろん、これからの社会を生きていく私たちの必読書として、お手にとってみてはいかがでしょうか。

本書籍で東京都美術館 × 東京藝術大学「とびらプロジェクト」とは?

「開会式 2期とびラー卒業式(2015年度)」

18歳以上の会社員、教員、学生、フリーランス、主婦や退職後の多種多様な人たちで構成され、学芸員や大学の教員などの専門家とともに活動する能動的なプレイヤーである「とびラー」と、学芸員や大学の教員、そして第一線で活躍中の専門家がともに美術館を拠点に、そこにある文化資源を活かしながら、人と作品、人と人、人と場所をつなぐ活動を展開している「とびらプロジェクト」。東京都美術館のリニューアルオープンをきっかけに、東京藝術大学と連携し2012年に始動しました。本書籍では、第1章【美術館で関わり合いを“つくる”とびラーの活動】、第2章【ミュージアムが“ハブ”となりコミュニティをつくる】、第3章【コミュニケーションの“質”が社会を“ひらく”扉になる】、終章【とびらプロジェクトの現在とこれから】と、その時のプロジェクトの様子が分かる写真とともに、「とびらプロジェクト」がもたらした新しい美術館の在り方とともに、斬新なアイディアから生み出された人と人とのコミュニケーションのかたちを紹介しています。

成功例も、失敗例も、ありのままに紹介!

7年間の活動をまとめた数々の実例には、プロジェクトの成功例はもちろんのこと、すべてが万事上手くいくとは限らないことを証明するかのように、失敗例も取り上げられているところに好感を覚える本書籍。その企画発端となる詳細や背景とともに、スピード感を持って進行していく物事を、分かりやすく描写的に捉えており、まるで文章に目を通している自分自身も、「とびラー」になったような疑似体験が味わえます。そして、赤裸々に明かされている企画者の不安や苦悩、参加者・利用者のリアルな感想なども、ありのままに紹介されていることに驚かされることでしょう。
例えば、第2章 CASE4【上野エリアの複数のミュージアムが連携するー「うえの!ふしぎ発見」】では、子どもが参加するプログラムにおいて、“きく力”のある「とびラー」たちの発言も然ることながら、企画運営において不安を払拭するために、事前準備としておく必要があったことだけでなく、会において気をつけたポイントなどの詳細も記されています。そして、プログラムに参加した子どもたちの感想はもちろんのこと、客観的に先生や母親からの目線で捉えた子どもたちの様子も紹介されています。
また、第1章 CASE2【鑑賞体験を増幅する二つの「とびラボ」ー「とびらボードでGO!」「イロイロとび缶バッジ」】では失敗例の場合でも、『今回のパターンはダメだったので、次回はこのような工夫が必要である。』というような反省と考察も忘れずに記載されているので、実践を通してる得た経験を次回に生かそうとする姿勢が読み取れます。
また、本書籍の章毎にはアーティストの日比野克彦さんらによるコラムが掲載されており、多角的視点によるコラムから現代社会が抱えている課題を見つめ、私たちが取り組まなくてはならない物事が浮き彫りになっています。そして、多種多様な経歴の人たちで構成されている「とびラー」が用いる、独特のコミュニケーションによって生み出された、新しいコミュニティの在り方がその課題を解決するヒントになるかもしれません。

多様性を愛せることこそが、幸せな社会へと繋がっていく

「あなたも真珠の耳飾りの少女(2012年度)」

現代社会において取り組まなくてはならない今後の課題は、多様性の尊重とそのネットワーク化の2つであると考えられています。
1つ目は多様な人々の多様な価値観、そして文化的背景の違いを、認識した上で尊重させること。2つ目はその生き方を孤立などさせずに、社会と関係付けて結びつけていくことこそが、柔軟な社会基盤へと繋がっていきます。それを実現させるためにはコミュニケーションの濃度を高めていける人達の存在が不可欠になっていきます。そんな人たちを育む取り組みをしている『とびらプロジェクト』は、未来を見据えた活動から社会に影響を与えていくことができるでしょう。
便利になっていく世の中だからこそ、如何に人と人との繋がりが大切か…人の心に触れる様々なプロジェクトが紹介されているから、個々人が多様性に溢れていること、その上で多様性を愛すること。そして、多様性に対応していくコミュニケーションを身についていくことこそが重要なのだと学びました。
本書籍は美術の専門書のような難しい本だと捉えられてしまいがちですが、アートがもたらすイマジネーションの本質的な部分に触れながら、そのアートを取り扱っている美術館だからこそできる新たな役割、そして能動的に活動できるコミュニティ形成の仕組みから、より良い社会を作り上げていくための道しるべとなっています。美術館好きの方からコミュニティづくり興味がある人はもちろん、これからの社会を生きていく私たちの必読書として、お手にとってみてはいかがでしょうか。

書籍情報
美術館と大学と市民がつくるソーシャルデザイン
東京都美術館×東京藝術大学 とびらプロジェクト編 

現在、絶賛発売中!
稲庭 彩和子(東京都美術館)・伊藤 達矢(東京藝術大学)著
出版社:株式会社青幻舎
判型:四六判
総頁:272頁
製本:並製(ソフトカバー)
定価:1,600円+税
HP:http://tobira-project.info/book/