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【映画】ユーモアと空想力で虚言に満ちた権力社会を風刺『葡萄畑に帰ろう』

12月15日(土)より全国順次公開『葡萄畑に帰ろう』は、権力社会への痛烈な風刺を、自由な想像力と大らかなユーモアで描いた人生賛歌です。ジョージア(グルジア)映画界の最長老エルダル・シェンゲラヤ監督が、実際に政界に身をおいていた自身の経験をもとに、85歳にして21年ぶりに完成させた物語を紹介します。

突然の災難の結末は?

ジョージア郵便局の配送車がある建物の前に着く。そこは“国内避難民追い出し省”。中へ入るとローラースケートを履いた職員たちがいったりきたり。荷物の注文主は、この省の大臣であるギオルギだった。荷物は、椅子。なんと肘掛につけたボタンひとつであらゆる操作ができる夢のような椅子だ。
ギオルギが椅子の座り心地を満喫していると、そこへ首相から厳しい命がくだる。避難民を追い出すために思い切った手を打てというのだ。しぶしぶ避難民が暮らす地域へ赴き、力づくで彼らを追い出そうとするが大混乱となり、選挙前にやるべきではなかったと後悔するギオルギ。 ギオルギは追い立てられようとしていた女性を助けようとし、反対に機動隊に殴られてしまう。救急車の中で目を覚まし、自分 が助けた女性ドナラの美しさに一目惚れするギオルギ。
ドナラに恋したギオルギは行く場所のない彼女を、息子ニカの英語の家庭教師として住み込みで雇い入れた。ギオルギは妻を亡くし今は独り身だが、同居する義理の姉マグダはドナラが気に入らない。ニカもドナラに冷たく当たる。ドナラは二人と打ち解けることを諦め、去って行く。 ギオルギが彼女の居場所を必死で探していると補佐官ダトが要領よく居場所を調べ上げていた。彼女をようやく見つけ出すギ オルギ。ふたたび家に戻ると、ニカは心をあらため、ドナラを受け入れた。
落ち着いたと思ったら、今度はギオルギの与党が野党連合に大敗。ギオルギは大臣をクビになる。見られると立場が危うくなる文書を家に持ち帰り、火にくべるギオルギ。それを見ていたのは使用人夫婦のレナ。かねがね自分たちの待遇に不満があったレナはこの書類をネタに野党連合と取引しようと考えていた。
省を後にするギオルギ。その後をいそいそ椅子がついてくる。一方、ダトはさっそく新大臣バトゥにとり入る。 大臣職を失ったギオルギだが、ドナラと結婚。ジョージア伝統の飲めや歌えやの楽しい結婚式が行われる。マグダは祝宴でやけ酒をあおる。幸福もつかのま、財務局から家を退去しろという命令が届いた。ギオルギは首相の口利きで不法取引で家を入手していたのだ。ギオルギは、今や大臣となったダトを訪ね、どうにかしてほしいと頼みこむ。愛想よく応じるダトだったが、ギオルギが帰ると態度は一変。結局、裁判で家は差し押さえになった。
なぜこんなことに。マグダは誰かが情報を漏らしていると疑った。
ギオルギは久しぶりに故郷の母を訪ねた。あんたの家はここ、畑や葡萄園で働けばいい。母の言葉は温かかった。故郷へ帰ろう、そう決意したギオルギだったが、マグダの猛反対にあい、疲れから倒れてしまう。アフリカ系男性と結婚した娘のアナはギオルギとはぶつかってばかり。だが彼女も見舞いにやってきた。ギオルギはしばらくの間、妻と息子をアナに預かってもらうことにする。そんなアナから、レナが敵対するジャーナリストに情報を売っていたことを聞かされ、激怒するマグダ。家にあった猟銃を持ち出し、レナ夫婦を脅すが、マグダはうっかりギオルギを殴ってしまい、気を失うギオルギ。
ギオルギが目を覚ますと、家は特殊部隊に囲まれていた。マグダが使用人夫婦を人質に立てこもったのだ。突入する警官隊。果たしてギオルギとその家族は?

葡萄畑はジョージアの魂、本来の夢への帰還

コーカサス山脈の南に位置し、東西交易の要衝であったため、周辺の国々に翻弄されながらも、ジョージアの人々が守りつづけてきたもの…それが独自の言語、宗教、そしてワイン。
ジョージアは8000年の歴史を持つワイン発祥の地で、伝統的なジョージアワインは、2013年、日本の和食とともにユネスコの無形文化遺産に登録されました。ワインの大地・葡萄畑はまさにジョージアの魂です。権力争いのなかで失墜した主人公ギオルギが、故郷の葡萄畑でジョージア人らしい生活と精神を取り戻し、家族を再生させようとする物語には、平和で幸せな社会をくり返し求めては潰されてきた過酷な歴史のなかで、それでも失わぬ理想の世界への夢に立ち帰ろうという監督のメッセージが感じられます。

ジョージア映画にユーモアと寓話が帰ってきた!

寓話的でありながら、辛口の風刺精神とユーモアにあふれ、同時に人間への愛とやさしさを失わない。シェンゲラヤ監督の作 風がみずみずしく溢れる本作。知られざる映画大国として近年注目され、テンギズ・アブラゼ監督の『祈り三部作』や現実のジョージア社会に向き合った『花咲くころ』などが日本公開されてきたジョージア映画だが、本作のように明るい作品は近年生み出されていませんでした。背景には90年代の内戦、紛争の混乱を経て、いま冬を過ぎて草花が芽生えるように、人間的なユーモアを感じさせる作品が生まれてきていることが挙げられます。本作を見たジョージア映画人が「とうとうジョージア映画にユーモアと寓話が帰ってきた!」と快哉をあげた名匠の傑作をお楽しみください。

映画情報

『葡萄畑に帰ろう』

公開表記:12/15(土)より岩波ホール他全国順次ロードショー
監督:エルダル・シェンゲラヤ
出演:ニカ・タヴァゼ、ニネリ・チャンクヴェタゼ、ナタリア・ジュゲリ、ズカ・ダルジャニア
上映時間:99分
製作国:ジョージア(グルジア)
配給:クレストインターナショナル、ムヴィオラ
HP:http://www.moviola.jp/budoubatake/