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【レポート】「 話しているのは誰? 現代美術に潜む文学 」

現在、国立新美術館では『 話しているのは誰? 現代美術に潜む文学 』が開催中です。本展覧会に参加する国内外で活躍する日本の現代美術家6名は、1950年代から1980年代生まれまでと幅広く、表現方法も映像写真を用いたインスタレーションをはじめとして多岐にわたりますが、これら作家の共通点として作品に文学の要素が色濃く反映されています。日本の現代美術における文学のさまざまな表現を経験してみませんか?

本展覧会の主軸となる“文学”

古代ローマの詩人ホラティウスが『詩論』で記した「詩は絵のごとく」という一節は、詩と絵画という芸術ジャンルに密接な関係を認める拠り所として頻繁に援用されてきました。以来、詩や文学のような言語芸術と、絵画や彫刻のような視覚芸術との類縁関係を巡る議論は、さまざまな時代と場所で繰り広げられてきました。
展覧会タイトルが示唆するように、本展では文学をテーマに掲げています。ですが、ここでの文学は、一般に芸術ジャンル上で分類される文学、つまり書物の形態をとる文学作品だけを示すわけではありません。現代美術において、文学はこうした芸術ジャンルに基づく区別とは違ったかたちで表れているように思われます。

現代美術家6名をご紹介!

田村友一郎

既存のイメージやオブジェクトを起点にしたインスタレーションやパフォーマンスを手掛ける田村友一郎さん。土地固有の歴史的主題から身近な大衆的主題まで着想源は幅広く、現実と虚構を交差させつつ多層的な物語を構築しています。本展覧会では、ナンバープレートの標語「Live Free or Die」と、某有名ファーストフード店を主題としながら、物語が展開されるインスタレーション作品《Sky Eyes》を発表。作品タイトルの《Sky Eyes》は日本語に直訳にすると「空目」となり、私たちが見ていないのに見たように錯覚してしまうことを表しています。

ミヤギフトシ

映像、写真、オブジェクト、テキストなどを用いて、社会政治的事象、とりわけセクシュアリティとマイノリティの問題を俎上に載せた作品を手掛けるミヤギフトシさん。本展覧会では、沖縄で沖縄人男性とアメリカ人男性が恋に落ちることは可能か、という問いとともに2012年から始まった現在進行中のプロジェクト「American Boyfriend」から、写真、映像、テキストなどによる一連の作品とブログによって構成しています。美しい写真群を鑑賞しながら時折スピーカーから流れるストーリーに耳を傾けてみてください。

小林エリカ

目に見えない物、時間や歴史、家族や記憶をモティーフとして作品を手掛ける小林エリカさん。美術館以外に書店でも彼女の名前を目にした読者もいらっしゃるのではないでしょうか?本展覧会では、「ウラン」と「オリンピック」を主題としながら、原子爆弾の原料であるウランと、ベルリンと東京でのオリンピック聖火の足跡をたどりながら、写真、映像、ドローイング、彫刻などによって構成しています。展示室入口では、小林エリカさんが執筆した「彼女たちは待っていた」の冊子が無料配布されているので、ぜひ手に取って読みながら作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

豊嶋康子

ソロバン、サイコロ、安全ピンなどの既製品、あるいは鉛筆、油絵具、木枠など美術に馴染みのある物質など幅広い素材に手を加え、これら事物の中に複数の見え方が表出する作品を手掛けている豊嶋康子さん。本展覧会では、「棚」シリーズ、「パネル」シリーズ、「グラフ」シリーズが展開されています。私たちの生活において身近に存在している日用品は、目に触れている部分や活用している部分だけではなく、様々な部分によって便利が成り立っていることを改めて教えてくれました。

山城知佳子

沖縄における米軍基地や戦争の問題を掘り下げ、接触と分離、継承と断絶、中心と周縁、生と死などの概念の境界を問い直してきました。近年はそれらの問題を沖縄だけでなく世界中に遍在する普遍的な歴史の問題とみなし、史実や伝承されてきた物語を引用した作品を手掛けている山城知佳子さん。本展覧会に出品している映像作品 チンビン・ウェスタン『家族の表像』は、米軍基地を巡る物語にオペラ歌劇がミックスされシュール且つ面白い構成になっています。

北島敬三

東欧、ソ連の人々を捉えたスナップシリーズや、崩壊してしまいそうな建築シリーズなどを展開している北島敬三さん。本展覧会では冷戦時代のソ連の人々を捉えた写真がとても印象的でした。どこか得意気で凛々しい表情を浮かべる軍人がいる一方で、その険しい表情から殺伐とした雰囲気が読み取れる庶民まで、同国においても表情の違いから当時のソ連の状況をおもんばかると、正義の違いはあれど心の憂いや嘆きを感じ取ることができます。

想像力を言葉に変換して楽しもう!

本展覧会の作品に使用される“文学”のさまざまな表現から、綺麗事だけでは語れない混沌とした現代社会を表してると思いました。それだけ印象的な部分が多く存在しており、私たちに訴えかけてくる表現が感じられます。ひとつひとつの現代美術作品と向き合いながら、様々な事実をつなぎ合わせて想像力を言葉に変換し、貴方なりに紡ぎ出してみてはいかがでしょうか。会期中は、本展覧会に出品作家によるトークショーが企画されています。ぜひそちらも併せてチェックしてみることで、鑑賞のヒントを得られるかもしれません。

展覧会情報

話しているのは誰? 現代美術に潜む文学

会期:2019年8月28日(水)~11月11日(月)
会場:国立新美術館
(東京都港区六本木7-22-2)
時間:10:00~18:00
(金・土は、8・9月は21時まで、10・11月は20時まで開館。入場は閉館の30分前まで)
休館:火曜日(10/22は開館)、10/23
HP:https://www.nact.jp/exhibition_special/2019/gendai2019/