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【レポート】言葉にならない感情に圧巻される「塩田千春展:魂がふるえる」

《集積ー目的地を求めて》2014/2019年

現在、東京・六本木にある森美術館にて好評開催中の「塩田千春展:魂がふるえる」。世界各地で精力的に作品を発表している塩田千春氏は、これまでに約300本の展覧会に参加しています。25年にわたる活動を網羅できる過去最大規模の個展となる本展では、初期作品や代表的なインスタレーション、最新作を含む113点を紹介しています。
(アイキャッチ画像:《集積ー目的地を求めて》2014/2019年)

葛藤の2年間の思いが汲みとれる展覧会

はじめてガラス作品を取り入れる (細胞や内臓を表現) 《再生と消滅》2019年

はじめてガラス作品を取り入れる (細胞や内臓を表現)
《再生と消滅》2019年

塩田千春氏は2年前、森美術館に今展覧会の誘いを受けました。
その翌日に、以前患った内臓癌が再発したと医師から宣告されます。
これからどうしていけばいいのかと悩んでいましたが、彼女は作品を創りだすことにしました。
塩田にとって「“死と寄り添う展覧会” であり、生と死について考えさせられた、非常に長い2年間であった」と語るとおり…本人のインタビューからは「生きててよかった、作品をつくってよかった」と微笑んで話しているシーンが印象的で、人生のなかでの大きな壁を乗り越えた、心身の強さを感じとることができました。
展示作品から塩田氏の問いかけを受け止め、改めて自身のなかの「生と死」について、考えてみてはいかがでしょうか。

塩田千春展 注目すべき作品たち

塩田千春さんご本人 と《集積ー目的地を求めて》2014/2019年

塩田千春さんご本人 と《集積ー目的地を求めて》2014/2019年

塩田千春氏の25年にわたる経験のなかで、彼女の作品をもっとも特徴づけるのは、黒と赤の糸を空間全体に張りめぐらせるダイナミックなインスタレーションです。
見る者の心を震えさせるだけでなく、目に見えない繋がり、記憶、不安、夢、沈黙など、かたちの無いものを体感的、視覚的に意識させられます。
また、面白い数値が出ており、本展示に使用された糸の長さは、赤糸 280km 、黒糸 200km という驚異的な長さになったそうです。
そのことも頭に入れながら魅力的な作品群を楽しんでいただけるよう、いくつか作品をピックアップしてみました!

《手の中に》2017年

会場入口すぐに展示されている《手の中に》。作中の腕は、塩田の実娘から象ったものなのだそう。今にも壊れそうな儚い造形物が、子供の両掌のなかで大切に守られている構図です。小さな掌に収まる抽象的なモチーフは、彼女の身体に内在する生命、あるいは魂を表現しているようであり、展覧会の副題である「魂がふるえる」を連想させますね。

《不確かな旅》2016/2019年

《不確かな旅》2016/2019年

会場に入って最初のインスタレーション作品《不確かな旅》は、真っ赤な糸で覆われた空間です。そこにはフレームだけの舟が配置されています。塩田氏のなかで”舟”は「不安定な船旅はこの先の不確かな人生でもあり、いつ沈むか分からない、舟が沈んでしまうと死んでしまう、そんな危険と隣り合わせです。」と語っています。しかし、その言葉の裏側には不確かな旅先にある多くの出会いを示唆しているかのようです。

《静けさのなかで》2002/2019年

《静けさのなかで》2002/2019年
塩田氏が幼少期に、隣家が夜中火事で燃えた記憶から制作された大規模なインスタレーション《静けさのなかで》。燃えたグランドピアノと観客用の椅子が、黒い糸で空間ごと埋めつくされています。音の出ないピアノは沈黙のなかでも、視覚的に音楽を奏でているようです。

《外在化された身体》2019年

《外在化された身体》2019年
2017年の癌再発と闘病以降、彼女の作品に身体のパーツが使われるようになりました。
その背景には、治療のプロセスでベルトコンベアーに乗せられるように、身体の部位が摘出され、抗がん剤治療などを受けるにあたり、魂が置き去りにされていると感じた経験があるのだそう。
「魂はどこにあるのか」。見えないことだらけのなかで、生命の営みの存在を感じるため、外在化されたのかもしれません。

みえないものを具現化した作品群を体感しよう

《時空の反射》2018年

《時空の反射》2018年

「不在のなかの存在」をテーマに作品を制作してきた塩田氏は、物理的には存在しないものの気配やエネルギーなどにかたちを与えてきました。
副題となった「魂がふるえる」という一行の言葉は、言葉になし得ない感情によって震えている心の動きを、他者にも伝えたいという塩田氏の思いの顕れでもあります。

現代ではあらゆることが急速に変化しながら価値観も揺れ動き、社会全体が確固たる理念を失っているように感じることもあるでしょう。
普遍的な思念につながる塩田氏の作品からそんな状況下の世に問うことは、きわめて有意義なことだといえます。
是非、塩田千春氏からの問いかけに応じてみたり、色んな思いを馳せながら、自分の魂のふるえを感じてみてはいかがでしょうか?

展覧会 開催概要
展覧会名:塩田千春展:魂がふるえる
主催:森美術館
協賛:株式会社大林組、株式会社 資生堂、thyssenkrupp Elevator、
   トヨタ自動車株式会社、サムソナイト・ジャパン株式会社、
   株式会社トゥミ ジャパン、TRUNK(HOTEL)
協力:シャンパーニュ ポメリー
制作協力:Alcantara S.p.A.
企画:片岡真実(森美術館副館長兼チーフ・キュレーター)
会期:開催中〜2019年10月27日(日)
会場:森美術館
   東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
開館時間:10:00-22:00 (火曜のみ17:00まで)
     *入館は閉館時間の30分前まで
     *会期中無休
     *ただし、10/22(火)は22:00まで
入館料:一般1,800円、学生(高校、大学生)1,200円、
    子供(4歳〜中学生)600円、シニア(65歳以上)1,500円
    *表示料金に消費税込
    *本展のチケットで展望台 東京シティビューにも入館可(スカイデッキを除く)
    *スカイデッキへは別途料金がかかります
一般のお問い合わせ:Tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)
森美術館ウェブサイト:https://www.mori.art.museum