【レポート】ユニークな表現で独自の物語性に溢れているジュエリー『リーン・ヴォートラン展』

現在、コスチュームジュエリーコレクター小瀧千佐子さんのプロデュースする北参道に在するショップブランドchisaにて、『リーン・ヴォートラン展』を開催しています。20世紀フランスで最も成果を上げた女性アーティストのリーン・ヴォートランによる、独自の物語性に溢れた稀少なアートジュエリーがご覧になれる本展覧会をご紹介します。

日本ではほぼ無名に近い〈一流の芸術家〉の展覧会

本展覧会は、1930年〜1970年頃最も活躍したフランスの女性アーティストであり、ジュエリーなど様々な作品を生み出したリーン・ヴォートランにスポットを当てています。彼女の名前は、一握りの美術品愛好家、独創的な個人収集家、宝石作家を除いて、日本国内ではあまり知られておらず、ほぼ無名に近い存在と言えるでしょう。しかし、ヨーロッパやアメリカでは多くの収集家たちが高評価を与える、〈一流の芸術家〉の名声を欲しいままにし、20世紀最高峰の芸術家/美術職人として知られています。会場では、そんな彼女が手がけた約70点ほどの作品から、これまで数多くの著名人や世界のセレブを魅了してきた、彼女の最大の特徴である“物語性”と“詩情”溢れる独自の世界を堪能することができます。

リーン・ヴォートランがジュエリーに込めたメッセージ

 

1913年、パリの職人街サンタントワーヌ通りの鋳造業を営む家庭に生まれた、リーン・ヴォートラン。
14歳の頃から実家のアトリエで鋳造、彫金で作品を制作しはじめ、1937年パリ万博に出展して公に認められ、パリにショップを構えました。展示作品のジュエリーには、鋳造からブロンズに金鍍金をかぶせたものだけでなく、彼女が生み出したタローセルという素材を用いたものまで、その種類や形状は様々で“素材へのこだわり”が感じられることでしょう。「メタル(金属)の詩人」と呼ばれる彼女が手がけたジュエリー作品には、聖書だけでなく、自作の物語、思想や詩など、他に例を見ないユニークな表現で彫り込まれており、じっと目を凝らすと様々な秘密を見つけることができます。
例えば、『栄光のアザラシ』では体の部分に聖書の一節が掘られていたり、『月の戦車』ではタイトルから憶測するに、月の姿を擬人化したロングヘアーの女性が、戦車のタイヤに乗っているのが伺えます。第一次世界大戦、第二次世界大戦、2つの戦争を生き抜いてきた彼女が作り出すジュエリーには、世俗的な物事への象徴や平和への祈りが込められているように感じました。面白いタイトルにも注目しながら想像を膨らませ、彼女のメッセージに触れつつ、アートジュエリーを鑑賞してみてください。

著名人に愛される稀少なジュエリーが鑑賞できるチャンス!

リーン・ヴォートランの作品はもともと数が少なく、ニューヨークやロンドンなどで稀にオークションに出展されますが、500万円を超えるものは少なくなく、300万円で落札されたネックレスも存在します。古くはイヴ・サンローラン、ブリジッド・バルドー、イングリッド・バーグマンなどの著名人、そして現在ではヴィクトリア・ベッカム、マドンナなどの世界のセレブに愛されています。これまで彼女の日本国内での展覧会はデイヴィッド・ジル(英)、コム・デ・ギャルソンの川久保冷氏により開催されていますが、今回は日本有数のヨーロッパコスチュームジュエリーコレクターの小瀧千佐子氏が、コレクターとしての目線を通して、厳選された美しい作品を集めています。そして、そんな美しい作品を身近に感じてもらえるようにと、鑑賞者との距離を出来るだけ近くした工夫もされており、このチャンスにリーン・ヴォートランのジュエリーともいえるアート作品を、是非直近で感じてみてください。

展覧会情報

『リーン・ヴォートラン展』

会期:2018年11月25日(日)〜12月23日(日・祝)
会場:chisa (渋谷区千駄ヶ谷4-21-2)

時間:11:00-19:00(最終日17:00まで)
入場:無料
休館:毎週月・火曜日休み
12月16日(日)臨時休業
主催:chisa、小瀧千佐子