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【レポート】「ミラクル エッシャー展」ー摩訶不思議の世界があなたを誘うー

現在、上野の森美術館で開催中の「ミラクル エッシャー展」。20世紀を代表する版画家のM.C.エッシャーが織りなす、ありえない世界を描いた唯一無二のミラクルな作風は、今尚世界の人々を魅了しつづけています。世界最大級のコレクションより、選りすぐりの約150点を公開している、生誕120年を迎えた「ミラクル エッシャー展」をご紹介します。

生誕120周年を迎えた本展覧会

 
左)エッシャーが描いた「バベルの塔」…19世紀後半から20世紀初頭にヨーロッパで流行したアール・デコ様式
右)展示風景

20世紀を代表する版画家の一人である、マウリッツ・コルネリス・エッシャー。実際にありそうで現実には存在しえない風景や、ひとつの絵中に重力が異なる世界が存在するなど、「ありえない世界」を描いている、エッシャーの唯一無二で“ミラクル”な作風は世界中の人々を魅了しつづけています。その独創的な世界は、同時代に活躍したどの画家とも交わらず、いわゆる「芸術」の文脈からは外れた存在と見られてきました。エッシャーの作り上げてきたビジュアルイメージは、クリエイターだけでなく就学者をはじめ、建築家など幅広い専門家たちへインスピレーションを与えてきました。1970年代に「少年マガジン」の表紙・特集企画の記事を掲載したことにより、国内でも大きなブームが起きています。

 

【8つのキーワード】でエッシャーの謎に迫る!

 
左)「ナイト・ミュージアム」よりロビン・ウィリアムスの背景にエッシャーの作品が使用されています。
右)2階へとつづく階段前のエントランスには「でんぐりでんぐり」。

エッシャーは、20世紀のオランダだけでなくヨーロッパ芸術のなかで、極めて独特な位置に立つ芸術家だったため、“奇想の版画家”として認知されています。版画というメディアに固執しつづけた彼が生み出したものは、現実的に見えながら非現実的な印象を与える不思議な造形でした。どのようにして無類の作品を生み出しのか、一体どのようにして作品を生み出していったのでしょうか。
本展覧会では、「科学」「聖書」「風景」「人物」「広告」「技法」「反射」「錯視」の8つのセクションからその謎に迫ります。さらにエッシャー作品の中に入ることができる映像デジタルコンテンツなど、チケット売場をはじめ、2階の階段や出口まで、美術館まるごとエッシャーの世界を体感できます。

 

エッシャー芸術の極点を見逃すな!

 
左)マウリッツ・コルネリス・エッシャー『滝 Waterfall.1961』All M.C. Escher works copyright © The M.C. Escher Company B.V. – Baarn-Holland. All rights reserved. www.mcescher.com
右)マウリッツ・コルネリス・エッシャー『相対性 Waterfall.1953』All M.C. Escher works copyright © The M.C. Escher Company B.V. – Baarn-Holland. All rights reserved. www.mcescher.com

日本初公開の貴重なコレクションの中でも、自身による初版プリントが公開される「メタモルフォーゼⅡ」は、後のエッシャーの代表的な構図の原点ともいえる注目作品です。日本絵巻を彷彿とさせる本作品は、幅4mにも及ぶ矛盾した世界を描いています。聖書から引用して文字から始まり、様々な形態へと変化しながら、循環しつづけてやがて最初の文字へと戻るという、エッシャー芸術の極点を示しています。
その他にも、重力が異なる世界が存在している「相対性」にはじまり、新しい遠近法により水の流れが分からなく「滝」など、当時の数学者が発表した不可能な図形に着想を得て、正則分割を用いた循環する表現とともに、長年エッシャーが独自に発展させた理論が形になっています。

日本とエッシャーの関係

 
左)「波」 右)制作時に使用された版木

木版、木口木版、リトグラフ、そしてメゾティントなど様々な版画技法に取り組み、それらの技法を高度に発展させていったエッシャーは、自らを「芸術家」ではなく「版画家」と考えていたのだそう…その背景には水力工学の技師だったエッシャーの父が、自身の仕事の関係で来日したこともあり、お土産として購入した浮世絵を持って帰ったのが、キッカケになったのではないかという見解もあります。会場では、葛飾北斎「神奈川県沖浪裏」にインスパイアされた作品や、実際に使用していた版木なども展示されており、その類稀なる制作の様子に想いを馳せることができます。本展覧会を通じて日本とエッシャーの関係は、意外にも近いところにあったのだと親近感を覚えました。
その他にも、世界最大のエッシャーコレクションを誇るイスラエル博物館所蔵品のほか、代表的な “ トロンプ・ルイユ(だまし絵)”の世界に加え、初期の作品や木版、直筆のドローイングなど選りすぐりの約150点を公開しています。
是非、摩訶不思議の世界が楽しめる貴重な機会を逃さないで下さい!

 

美術展情報
『生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展』
会期:2018年6月6日(水)〜7月29日(日)
会場:上野の森美術館

時間:10:00~17:00 毎週金・土曜日は20:00まで ※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
公式サイトhttp://www.escher.jp